やあ、天狗堂です。

アーユルヴェーダって聞いたことありますか?
「あ~、あのオイルでマッサージする・・・」
そうそう。それもアーユルヴェーダの技法です。日本でもわりと知られてきましたね。
さて、そうしたアーユルヴェーダですが、そもそも何を意味しているのかご存知ですか?
アーユルヴェーダはインドやスリランカなどに伝わる「総合医療・生命科学」です。

総合医療ってなんだろう?って思いますよね。
総合医療とは単なる民間療法の寄せ集めではなく、体系的な理論をそなえた医学のひとつだということです。
その対象は幅広く、例えば肉体だけでなく私たちの心や生き方も考察の対象とします。
治療法においても薬剤だけでなく、生薬や食事、日常の生活からアロマやハーブによる心身のリラックス、オイルマッサージに代表される身体の浄化法まであらゆる方法で「総合的な健康」に近づこうとするものです。
さて、今回はその基礎知識と歴史が誰にでもわかるよう簡単にまとめました。ぜひご覧ください。
■目次
アーユルヴェーダって何をするもの?
総合医療であるアーユルヴェーダの目的は、肉体の不調を治すだけではありません。
- 病気にならない健康な肉体を養うにはどうすればいいか?
- そもそも人間の体質はどのように分類できるか?
- 病気と感情や精神との間にはどのようなつながりがあるか?
- 眼や口、爪にあらわれる病気のシグナルとは何か?
- 食べ物の分類と体質や健康とのかかわりは?
- ちょっとした不調に効くスパイスやハーブの配分は?
- マッサージや瞑想、ヨガが健康に及ぼす効果とは?
表面的なものだけでも、ざっとこのような項目を対象としています。

肉体と精神は結びついている
アーユルヴェーダでは、健康は肉体だけで成り立つものではなく、心や魂、五感もすべて含めたものだと考えます。
たとえばストレスは精神的なものだと思われがちですが、実際にストレスは胃や腸といった器官に負担を与え、時には病気にさせてしまいますよね?

これは私たちの肉体と心理が密接に結びついている証拠です。

ですからアーユルヴェーダの目的は肉体の不調を治療するだけにとどまりません。
「心と体が健やかで、精神的にも物質的にも充実した人生を送るためにはどうしたらいいか?」
アーユルヴェーダはそうした大きなテーマを追求する哲学でもあります。
アーユルヴェーダが重視する「病気の予防」と「心や精神のケア」
アーユルヴェーダは病気の治療のみを重視するのではなく、
- そもそも病気になりにくい身体をつくること
- 心身ともに健康を維持し病気を防ぐこと
という「予防医学」の側面を大切にしています。
たとえ表面的に病気がなくとも、心や精神に悩みを抱えていれば「健康」とは呼べませんよね?
こうした理由からアーユルヴェーダは精神的なケアも行います。

その方法として投薬や物理的治療だけでなく、
- 患者にあった食事や生活習慣のアドバイス
- 自然の生薬の推奨(台所薬局)
- 占星術の理論を取り入れた生活リズムの提案
- 瞑想、ヨガ、アロマなどのはたらきによる精神の浄化、リラックス
なども推奨されています。

身体と心を整える基本は「自然治癒力」
アーユルヴェーダは様々な方法をもちいて体と心を整える医学です。。
その基本となるのは「自然治癒力」です。
アーユルヴェーダでは、人間の体内にはさまざまな種類のエネルギーが流れていると考え、そのバランスを整えることで不調を治し、身体や心の病気を防ぐことを目標とします。

具体的には、
- 五大(五つの元素)からなるヴァータ(風)、ピッタ(胆汁・熱)及びカパ(粘液・痰)のトリ・ドーシャ(3つの体液、病素)のバランスが取れていること
- 食べ物の消化、老廃物(汗や尿、便)の生成・排泄が順調であること
- サプタ・ダートゥ(肉体の7つの構成要素)が良い状態であること
といったことを重視していきます。

アーユルヴェーダの世界観
アーユルヴェーダの理論の中心に「宇宙は五つの元素から成り立っている(五大)」という考え方があります。
五大とは「空」「風」「火」「水」「地」から成り立つもので、これは仏教にも多くな影響を与えた理論です。
ここでいう元素とは、現代科学でいう「元素」とは意味合いが異なりますから「要素」と捉えてもよいかもしれません。
すべては五大から成り立っている
アーユルヴェーダの理論の中心には、
- 人間の身体は小さな宇宙であり、外なる大宇宙と密接に関わっている
- この世は五つの元素(空風火水地)が組み合わさって存在している
- つまり、外なる大宇宙も、内なる人体も、五つの元素が組み合わさって成り立っている
という考え方があります。
おわかりでしょうか? わたしたちは単に個人として存在しているのではなく、周りの環境や世界全体と結びついて成り立っているのです。
身体の中で五大はどうはたらいているの?
実際に五大がどのように人体に表れているのか、順を追って見ていきましょう。
まず、空の元素は「空間」を意味します。人体に置き換えた場合、口や鼻、消化管、腸の内部などの空間がそれにあたります。
次に風の元素は「動き」を象徴するものです。筋肉の収縮や脈動、肺の伸び縮み、胃腸のはたらきなどは風の属性に当たります。
三番目の火の元素は「代謝」を象徴します。消化器官で食物が消化されたり、運動して熱を発するのは火の元素のはたらきに分類されます。また、脳の活動や光を感知する網膜のはたらきも、火の属性を持つと考えられています。

四番目の元素である水は、血液、細胞質、粘膜、唾液や消化液の中に含まれています。人体の実に七割から八割が水分だとも言われていますね。このように水は細胞組織や臓器の機能に欠かせないものなのです。
五番目の元素である地は、形ある物質を意味しています。人体で言うならば、たとえば骨や軟骨、爪や筋肉、靭帯、皮膚、毛髪などがここに含まれます。
お分かりでしょうか? 人間の身体には五つの元素がすべて含まれ、そのはたらきによって成り立っているのです。
アーユルヴェーダの歴史をざっと解説!!
それではアーユルヴェーダの成立までの歴史を見ていきましょう。
病気とシャーマン
そもそも人間は原始時代の初めから「どうして病気にかかるのか?」について疑問に思っていました。
最初はシャーマン(祈祷師)のおまじないや薬草による治療が主でしたが、時代が下るにつれて理論化され、医学として洗練されていきます。
アーユルヴェーダの古典が登場
インドではこれが哲学的な世界観と結びつき、やがて医学として独立するようになります。
正確な年代は諸説ありますが、まず『アグニヴェーシャ・タントラ』という文献が登場し、医師チャラカが編纂した『チャラカ・サンヒター』、医師スシュルタが編纂した『スシュルタ・サンヒター』などが古典として定着します。

これらは様々な人によって手が加えられ、おおよそ10世紀ごろには現在の形となりました。
ユナニ医学(中東医学)との交流
その後、インド亜大陸にはイスラム教勢力が侵入します。
彼らがもたらした「ユナニ医学」はアーユルヴェーダと理論的に近いものがあり、両者の交流によってアーユルヴェーダに新たな要素が加わりました。
現代のアーユルヴェーダ
現代に入るとインド・スリランカでは「伝統的な医学」として見直され、大学による教育や国家による医師の認定試験なども行われるようになりました。
アーユルヴェーダの知識は欧米にも伝わり、世界各国で西洋医学を補完するものとして研究がなされています。
日本においては弘法大師空海などの留学僧により、アーユルヴェーダのごく一部の知識が伝来しましたが、本格的にインド医学として紹介されたのは大正時代に入ってからです。
現代日本においてアーユルヴェーダ医師は数少ないものの、オイルマッサージやハーブの使い方、体質に合わせた食事療法などが注目され、徐々にですが認知度は上がっている状況だと言えるでしょう。
今回のまとめ、4つのポイント
以上がアーユルヴェーダの基本的な知識と歴史です。
重要な個所をまとめると、
- アーユルヴェーダは肉体と精神ともに注目する総合医療である
- 投薬や物理的治療だけではなく、ヨガやハーブ、生活習慣の指導まで含めた様々な方法を用いる
- 基本に5つの元素(五大)があり、そこから各個人の体質も導き出される
- 原始的な呪術がやがて古代インドの哲学と結びつき、やがて世界各地に知られるようになった
ということになります。

いかがだったでしょうか?
基礎を押さえておくことでアーユルヴェーダの理解は一層スムーズになることでしょう。
次回の3タイプに体質を分類!誰にでもわかるドーシャの基礎知識まとめでは、アーユルヴェーダのもっとも基本的な理論である「トリドーシャ」についてご紹介します。
私たちには生まれつき持った体質があり、それは大きく3つに分類される。それを見ていくことでかかりやすい病気や摂りすぎに注意する食物が見えてくる、というものです。
ぜひあわせてご覧ください。ではでは~(*´▽`*)