やあ、天狗堂です。

前回のアグニとアーマ、病気の関係。アーユルヴェーダの生理学とは!?では、
・各ヴァータ(体質)によってかかりやすい病気、バランスが崩れた時の変化
・病気が起きる原因、アーマとアグニ
・精神(心)と免疫の関係、免疫とドーシャ
について見ていきました。
今回はこれをもう少し掘り下げて「アーユルヴェーダはどんな基礎理論から成り立っているのか?」について見ていきます。
これを理解することで「なぜここではこのように考えるのか?」がわかってくることと思います。
では行ってみましょう!!!!
アーユルヴェーダの思想的基盤は哲学にある
まずはじめに知っておきたいこと。それは、
アーユルヴェーダはサーンキヤ哲学に基づいている
ということです。
しかしサーンキヤ哲学と言ってもよくわかりませんよね。wikipediaによれば…
サーンキヤ学派(サーンキヤがくは、梵: साङ्ख्यदर्शनम्、Sāṅkhya-darśana)とは、インド哲学の学派のひとつで、六派哲学の1つに数えられる。世界の根源として、精神原理であるプルシャ(神我[1]、自己[2])と物質原理であるプラクリティ(自性[1]、原質[2])という、2つの究極的実体原理を想定する。厳密な二元論であり、世界はプルシャの観照を契機に、プラクリティから展開して生じると考えた。
wikipedia
とあります。
要するにサーンキヤ哲学とは古代インドの哲学の一つで、仏教とは親戚関係に当たります。
またサーンキヤ哲学はヨガとも関りが深く、理論面での基礎ともなっています。
サーンキヤ哲学の見取り図

上の図はサーンキヤ哲学の思想を大まかに図にしたものです。
なんだか難しそう…と思ったあなた(`・ω・´)!! 大丈夫!ざっと頭に入れるだけで大丈夫ですよ。
プルシャとプラクリティ
一番上には「プルシャ」と「プラクリティ」なるものがありますね。
このうちプラクリティは万物の素であり女性的エネルギー、プルシャは純粋な精神エネルギーであり男性的エネルギーと考えてください。
プラクリティは普段安定した存在ですが、プルシャが「観察」した結果、そこに乱れが生じ、様々な形へ展開する…というのがサーンキヤ哲学の要諦です。
トリ・グナ
プラクリティにはトリ・グナ(三徳)と呼ばれる3つの性質が備わっています。
その3つのグナとは、サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(翳質)で、これらは普段バランスを保っています。
- サットヴァ:安定、覚醒、本質、光
- ラジャス:躍動、運動、活発
- タマス:潜在、惰性、暗闇、物質
このバランスが崩れた時、3つのグナ間で相互作用が起こり、それが万物の創造、進化へ展開されるのです。

アーユルヴェーダという言葉はサンスクリット語で「生命の知識」を意味します。
その思想によれば、人間個人は外部の環境である宇宙と同体であり、切り離せないものとされています。
ですからここで紹介する哲学は、宇宙の成り立ちを示すと同時に、我々の身体/精神の成り立ちを示してもいるのです。
万物の展開
プラクリティから最初に展開されるのはマハーンと呼ばれる機能です。マハーンは「大自我」とも呼ばれています。
そのマハーンからアハンカーラと呼ばれる機能が展開します。これが私たちが通常「自我」と呼ぶものです。
アハンカーラはサットヴァの助けを借りて、心(マナス)、五知根(認識器官)、五作根(運動器官)を形にします。これらは「有機宇宙」に分類されます。
一方でアハンカーラはタマスの力を借りて、五唯(パンチャ・タンマートラ)、五大(パンチャ・ブータ)を創造します。こちらは「無機宇宙」に分類されます。
トリ・グナの役割
サットヴァもタマスも潜在的エネルギーであり、それ単体では動きを持ちません。
ここにラジャス、つまり活発な生命エネルギーが働きかけることで、有機宇宙と無機宇宙はそれぞれ互いの方向へ揺れ動くようになります。
またトリ・グナはヒンドゥーの神々とも結びつき、
- サットヴァ=潜在的な創造力=ブラフマー
- ラジャス=運動維持力=ヴィシュヌ
- タマス=潜在的破壊力=シヴァ
と考えられています。

このサーンキヤ哲学の思想は、アーユルヴェーダのみならず、ヨーガやタントラ(神々に対する礼拝や供養の規則)にも取り入れられています。
これら伝統的な生命の修行法の目的は、身体を健やかにすることで心の浄化を図り、最終的に真理と一体化することにあります。
身体を作るヨーガ、頭にあたるタントラと比較すると、アーユルヴェーダは「基礎」と言えるでしょう。この3つは分離不能な三位一体であり、中でもアーユルヴェーダはもっとも入りやすい入り口です。
5大元素と人間
さて、サーンキヤ哲学の概要をご紹介しましたが、アーユルヴェーダにおいて重要なのは五大(パンチャ・ブータ)です。
五大は万物の源となるものであり、また人間の構成要素でもあります。
五大の発生
古代インドの知識人たちは、宇宙は「オーム」という音なき音から始まったと考えました。
その波動から最初に空の元素が現れ、その動きが風を発生させます。
風と空の動きは摩擦を生じさせ、その摩擦から熱=火の元素が発生しました。
火の元素は空の一部を溶かし、それが水の元素へ。さらには土へ変化します。
こうして宇宙に空・風・火・水・地の五つの元素が誕生したのです。
物質の誕生
五大は地球上の存在を生み出します。
土の元素を主軸として野菜や穀物などの植物、人間やその他動物などのすべての生命体が創り出されました。
土の元素はまた、金属類などすべての無機物の源ともなっています。

物質はすべての元素を内包する
あらゆる物質は5つの元素のバランスによって存在しています。
例えば水は、氷の状態では土の元素により固定されています。しかし潜在的な火の元素により、氷はとけて水となります。
液体となった水はさらに風の元素として水蒸気に変化します。そして最後に蒸気は空へ変化(空間に消える)します。
このようにアーユルヴェーダでは「すべての物質は宇宙に発生したエネルギーに由来する」と考えています。エネルギーと物質はもともと一つだということです。
人間と五大
またアーユルヴェーダでは、人間(生命)は5つの元素から成り立っていて、それ自体が一つの宇宙と考えます。
人間の器官や感覚は五大と密接に結びついているのです。
五大と器官
空の元素は人体中の空間として表現されます。
口や鼻、気道、腹腔、血管やリンパ管など、物質を取り込み循環させるための空間がそれに当たります。

風は人体において「動き」として表われます。
風の元素は、筋肉の収縮や心臓の拍動、胃腸の活動という形態をとります。また神経系統も風の要素で支配されています。

火は人体において「代謝」として表われます。
火の元素は消化器系ではたらくのみならず、脳においては知性を、眼球においては網膜を活性化させます。
このように、体温、消化、思考、視力はすべて体内の火の表われです。

水は人体においてあらゆる「液」となります。
水の元素は消化液や唾液、粘膜、血液など、体内器官の維持に欠かせない液体となります。そのため下痢や脱水で水分を失えば、最悪の場合死につながることもあります。

土は生命の形を作る働きがあります。
体内の固い構造物、骨や軟骨、爪、筋肉、皮膚、毛は地の元素の表われなのです。

五大と五感
5つの元素は体内において五感の機能にも現れます。
元素 | 感覚 | 感覚器官 | 作用 | 行動器官 |
空 | 聴覚 | 耳 | 言葉 | 舌、口、声帯 |
風 | 触覚 | 皮膚 | 把握 | 手 |
火 | 視覚 | 眼 | 歩行 | 足 |
水 | 味覚 | 舌 | 生殖 | 生殖器官 |
土 | 嗅覚 | 鼻 | 排泄 | 肛門 |
空は音が伝わる媒体でもあるので、感覚機能としての耳と聴覚に密接に結びついています。また言葉の器官である舌、口、声帯、そして言語の働きも空の元素が関わっています。
風は皮膚を通じて触覚に結びついています。また、人間の手を通じて把握ーー掴んだり受け取ったり、与えたりする役目も持ちます。
火は光や熱、色と関係していて、目を通じて視覚と結びついています。また視覚は平衡感覚と関係しているので、歩くための足とバランスの維持に結びついてもいます。
水は味わうための舌を通じて、味覚に結びついています。水のはたらきがなければ味覚を感じることはできません。また、水の元素は生殖器を通じて生殖機能にも関りをもちます。
地は鼻を通じて嗅覚に結びつきます。鼻はまた、肛門を通じて排泄にも関係します。例えば便秘がちな人は嗅覚も同時に鈍る傾向にあります。
アーユルヴェーダの理想は「外界と内界の調和」
以上がアーユルヴェーダの思想の基本です。
アーユルヴェーダにおいて肉体と五感は、宇宙を構成する要素である五大と同質であると考えます。
そこで各個人が肉体という小宇宙を外界と完全に調和できるように、各種の治療法、食事、生活をサポートしていくことが基本となるのです。
今回はこんなところで。ではでは!!